Kooksが『Junk of the Heart』に詰め込んだ濃密なポップソング

Kooks『Junk of the Heart』を聞いています。
英国の代表的なギターバンドとして認識されているKooksですが、サードアルバムになる『Junk of the Heart』は思い切った作品に仕上がっていると思います。今作『Junk of the Heart』は一言で言えばギターサウンドにとらわれないポップのセンスを凝縮した様なアルバムで、12曲で35分50秒と非常にコンパクトにまとまっているもののかなり濃度の濃いアルバムに仕上がっています。単純にギターがジャーンと鳴っていてそこに英国風のメロディが飛び込んでくるといったシンプルな楽曲が減り、かなり多様なサウンドをギュッと詰め込んだ様なアルバムになっており、確かに前作まで見られていた即効性があって疾走感のある楽曲は減ってはいるものの、趣き深いLuke Pritchardのソングライティングの能力が実に際立つ作品になっています。
アルバムのオープニングを飾る「Junk of the Heart (Happy)」はストリングスを中心に様々なサウンドを詰め込んだ暖かいポップソングで、続くコーラスワークが印象的な「How'd You Like That」へのバブルガムな流れは今までのにはなかった流れ。ストリングスが大胆に導入されながらもあえてコンパクトにまとめあげた「Time Above the Earth」、サンプリング、打ち込みが取り入れられモダンで浮遊感ある楽曲に仕上がった「Runaway」辺りは、今までのKooksにはない洗練されたものだし、従来型のKooksらしい疾走感のあるギターが炸裂している「Is It Me」にしてもバックトラックには打ち込みサウンドを導入しています。この様に一貫してバラエティ豊かなサウンド『Junk of the Heart』は彩られているのですが、最終曲の「Mr. Nice Guy」では「Twist and Shout」なコーラスを導入してアルバムを締めている事からも分かる通り、クラシカルなポップソングへのアプローチや英国的で親しみやすいメロディライン自体は失われておらず、即効性は無くとも全体を通せばグッドメロディが詰め込まれたアルバムに仕上がっています。
という事で『Junk of the Heart』は今までのKooksのリスナーからすれば賛否両論あってしかるべき作品なのですが、今後のKooksの音楽活動が末長く継続される為には通らなければならない通過点だと思いますし、逆に今までの路線のままで頭打ちになる前に、ここからならどの方向にも飛んでいけるという状態を作り上げたのは正解だったと思います。

Junk of the Heart

Junk of the Heart