Strokesが『Angles』で接近した80年代と原点回帰を喜ぶ

Strokes『Angles』を聞いています。結論から書くと前作『First Impressions of Earth』よりも曲の出来にバラツキが無く、各曲の平均点は上がっており、アルバムの統一感、曲のクオリティともに個人的には今作の方が優れていると感じました。
分かりやすく80年代を意識したシンセサイザーにレゲエビート、Strokesが重厚だった前作とは対極的なサウンドメイキングを『Angles』で聞かせている事から、リスナーやメディアの間では様々な論調で賛否両論が語られています。とはいっても元々Strokesはチープでスカスカのサウンドに、ロックンロールを一閃させた様なサウンドが受け入れられたバンドで、『Angles』サウンドは性質的には『Is This It』から『Room on Fire』の流れに通じており、サウンドの印象は変われど、原点回帰した作品だといえると思います。
収録曲の中には、先行シングルだったモータウンビートが軽快な「Under Cover of Darkness」を筆頭にポップなメロディが耳に残る作品が多く、コステロを意識した(というかライブにコステロが飛び入りしている事からも分かる通り、ダイレクトに影響下にある楽曲。)という「Taken for a Fool」やレゲエ風のリズムを上手くポップに消化した「Machu Picchu」などの楽曲が非常に印象的です。また、「Call Me Back」「Life Is Simple in the Moonlight」の様にこのアルバム独自の浮遊感のあるサウンドも新鮮で、Strokesの新たなサウンドは十分に発揮されているように思います。
彼等の不幸なところはそのデビュー作が必要以上にもてはやされすぎた点で、その事が足枷となり極度のプレッシャーを背負わされてしまったバンドだと思います。今作『Angles』を発表した事でその重荷から完全に解放されるかといえばそうでもなく、むしろ五年という長い期間を空けてしまった為に、リスナーの期待感が目一杯に膨らみ、『Angles』サウンドを肩透かしに感じる人は多いと思いますし、その事で新たな重荷を背負ってしまった感すらあります。しかし、完全に振り切れて手の届かないサウンドに進化してしまう事より原点回帰を目指したサウンドには、彼等が期待されるものに応えようとする必死な気持ちが表れていて、その点はもっと評価されるべきだと思います。誰が聞いても『Angles』Strokesのターニングポイントになる作品だと感じると思うのですが、それはもしかするとバンド活動の継続を困難にするくらい大きなターニングポイントなのかもしれません。でも『Angles』は次作こそがStrokesの音楽的ピークになるのではと思わせる仕上がりだと思いますので、願わくば次のアルバムが短いスパンで発売されます様に。
デザインの良し悪しは別にして、ジャケもサウンドのイメージ通りカラフルな仕上がり。

Angles

Angles

そりゃコステロが乱入すれば盛り上がりますよね。