R.E.M.の『Collapse Into Now』に最敬礼を添えて

R.E.M.の新作『Collapse Into Now』は本人達がインタビュー等で仕上がりに自信を見せていた通り、掛け値なしの快作に仕上がっていたのでご紹介。
前作『Accelerate』が疾走感のあるギターサウンドを中心にしたアルバムだった事に比べると、『Collapse Into Now』は今までのR.E.M.サウンドを総決算する様に様々なサウンドが詰め込まれた一枚になりました。もちろん、『Accelerate』を継承する様なギターサウンドが印象的な「Discoverer」「All the Best」の様な楽曲もありますし、何といっても初期のR.E.M.を髣髴させる瑞々しいロックサウンドとポップさが素晴らしい「Mine Smell Like Honeyは名曲だと思うのですが、個人的にはR.E.M.の素晴らしさが最も映えるミドルテンポの楽曲に耳を奪われました。特にMike Millsの相変わらず素晴らしいコーラスワークが聞ける「Überlin」「Every Day Is Yours to Win」などアコースティックな響きを持つ楽曲の仕上がりの良さが印象的で、その事を何よりも嬉しく感じました。
コーラスでいえばEddie VedderJoel GibbThe Hidden Cameras)が参加した「It Happened Today」Peachesが参加した「Alligator_Aviator_Autopilot_Antimatter」、そしてPatti Smithが参加した「Blue」「Discoverer」とゲストボーカル陣も豪華で、Michael Stipeの独特のボーカルを際立たせながらもアルバムに華を添えています。この様に多数のゲストボーカルが参加する事によって『Collapse Into Now』はボーカルやコーラスワークにも強いスポットが当たっており、同時に非常に風通しの良い作品に仕上がっています。また、収録曲の中にも2曲の共作曲(UKドラッドとの接近とホーンが印象的な「Oh My Heart」「Blue」)が含まれており、様々なアーティストに触れる事で、R.E.M.自身がR.E.M.を客観視しながらバランスを取る事が出来たのではないかと思うし、真っ直ぐに自分達のサウンドを追求し続ける事が出来たのではないかと思います。
Bill Berryを失ってからのR.E.M.はどこかバントとしてのポジションを暗中模索しながら再構築しようとしていた様に感じていて、それは作品のサウンドにも反映されていた様に思います。そうした90年代後半から2000年代を経て生み出された『Collapse Into Now』が手放しで喜べる作品に仕上がった事は、ワーナーとの大型契約も終え、契約の上でも一区切り付いたR.E.M.にとっても非常に大きな事だと思います。そして、「Blue」の後に循環して一曲目の「Discoverer」に戻る構成になっている『Collapse Into Now』を繰り返し聞いていると、R.E.M.の長い音楽キャリア自体と重なる部分があります。超ベテランバンドながら前進する事を止めないR.E.M.に改めて最敬礼。

Collapse Into Now

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