BUMP OF CHICKENが『COSMONAUT』で聞かせる唄とメロディと優しさ

2010年に書き逃したBUMP OF CHICKEN『COSMONAUT』のレビューでも。
前作orbital period』から三年振りとなるスタジオアルバムとなった『COSMONAUT』。日本のアーティストの作品のリリース間隔からすると長い部類になると思うのですが、BUMP OF CHICKENおよび藤原基央の創作のペースを考えると丁度良いインターバルだったように思います。
まず、今作『COSMONAUT』サウンド面ではトラッドの影響が色濃く出ており、アコースティックギターの響きが今までのBUMP OF CHICKENのものとは別物の様に感じ、全体を通して軽やかさと爽快さが大幅に向上した事が目立ちます。サウンド面での変化は「分別奮闘記」を聞いて頂ければ分かりやすく、トラッドやケルト音楽が持つ童謡的な印象を上手く日本語で消化しており、その日常的で面白みのある歌詞のリフレインが「分別奮闘記」にピッタリとはまっています。また今作のメロディと歌詞も歌に重きを置いたもので、詰め込みがちだった言葉が減り、過不足無く自然にメロディに寄り添う歌詞に様変わりしている印象を受け、歌モノのアルバムとして素晴らしいレベルに到達していると思います。歌詞の内容も独白の様にストーリーを吐き出していた初期の作品に比べると、どこか一歩引いて他人を対象化しているというか、本当の意味での小説家の様に歌詞を紡いでいっている気がします。何よりポジティブな一面を見せつつ変化してきた藤原基央の歌詞が、今作のサウンドには非常に合っているのだと思います。
どの楽曲もサウンド面の創意工夫が見られ、色々な意味で濃密なアルバムに『COSMONAUT』は仕上がっており、14曲のボリュームがあるものの、前述したサウンド面やメロディ面の変化が良い方向に働き、今までのBUMP OF CHICKENのアルバムに比べると重たさを感じる事無く、濃密ながらもあっという間に聞き終える事が出来ます。個人的なベストトラックは「ウェザーリポート」で、これはこの曲が偏りのないど真中なBUMP OF CHICKENを感じる事が出来る為で、アルバムでも飛び抜けてポップなメロディと歌詞のバランスが素晴らしく、ポップソングという意味ではBUMP OF CHICKENのベストトラックだといっても過言ではないと思います。また、メロディと歌に重きを置いた『COSMONAUT』だけに歌詞の中に「歌(唄)」や「音符」というフレーズが印象的に響くのも非常にシックリきます。何よりも『COSMONAUT』は非常に優しいアルバムに仕上がっていると思いますので、イメージに囚われずに聞いて頂きたいと思います。

COSMONAUT

COSMONAUT

CD不況時代にCDでサウンドを聞かせようとするPVの意図も支持。