Take Thatの『Progress』が2010年最大のヒットアルバムになった理由

日本にはその熱狂がイマイチ伝わってきていませんし、各音楽メディアでもほとんど取り上げられる事がありませんが、Take Thatの最新作『Progress』が大変な事になっています。
とにかく、『Progress』は本国UKを中心に記録的な大ヒットを飛ばしており、この音楽不況の中、UKではあのoasis『Be Here Now』というモンスターアルバム以来の大ヒットを記録しています。具体的な数字を挙げると11/15の発売初日に235,000枚以上を売り上げており、これは『Be Here Now』が424,000枚売れたのに次ぐ記録だそうです。結局、発売一週間で約520,000枚を売り上げた『Progress』(ちなみに『Be Here Now』の一週間の売上は696,000枚。3位はColdplay『X&Y』、4位はTake That自身の『The Circus』)は、間違いなくヨーロッパでは2010年最大のヒット作だといえると思います。この大ヒットの理由としてRobbie Williamsの劇的な再加入がある事には間違いないのですが、アルバムの内容も今の音楽シーンに迎え入れられる素晴らしいものになっているのでレビューしていきたいと思います。
前作『The Circus』Take Thatが見せた王道的なUKのポップサウンドから一転し、気持ち良いくらいに振り切ったエレクトロサウンドによって最先端のダンスミュージックに仕上げられた『Progress』には、新鮮な驚きが詰め込まれており、Take Thatが進化を遂げた充実作に仕上がっています。また、『Progress』大きな特徴はそのアルバム構成にあって、1〜6曲目まではRobbie WilliamsGary BarlowMark Owenの三人を中心にリードボーカルを分け合う形になっており、RobbieGaryが5曲、Markが2曲でリードボーカルを分け合っている事からも分かる通り、RobbieGaryのコンビによる楽曲(4曲)がアルバムの中心になる事で二人の邂逅がハッキリと伝わってくる仕上がりになっています。そして、アルバムの後半ではメンバー5人がそれぞれにリードボーカルを取る5曲が収録されており、まるでメドレーを聴いている様な高揚感のある展開が、Take Thatの歴史を知るリスナーの目頭を熱くさせます。『Progress』を聴いていて思うのは、疑問視されたRobbie Williamsの復帰も驚くほど上手くいっているという事で、Robbie Williams自身も最新のソロアルバム『Reality Killed the Video Star』が好意的に受け入れられた事(チャート的には2位で終わったものの、売上的には前作『Rudebox』を上回った)で、非常に良い状態でTake Thatへの復帰を果した事になりますし、解散状態にあったTake Thatが4人で復活を遂げ、5人でこうしてまたトップグループとして再びピークを迎えている事は、様々な要素が奇跡的に結びついた事による素晴らしく感動的な出来事だと感じます。
収録された楽曲の中では先行シングルになっている「The Flood」が、元来のTake Thatの持っているサウンドとボーカルの魅力とダンスミュ−ジックをバランス良くミックスさせた楽曲で、ヒットするのは当然の仕上がり。ベストトラックは年末から来年にかけてのフロアヒットになる事間違い無しの大アンセム「Happy Now」になると思うのですが、アルバムとしてのトータルクオリティの高さと構成力が優れた『Progress』ですので、一枚を通して楽しめる作品になっていると思います。
また、前作『The Circus』でUKを代表するソングライターへと飛躍的な成長を遂げたMark Owenがメインボーカルになっている楽曲「SOS」「Kidz」「What Do You Want from Me?」の3曲も出来は良い(特に「What Do You Want from Me?」は伸びやかなボーカルと普遍的なメロディがダンスミュージックを支配した好トラック)のですが、どちらかといえば脇役に徹している印象で、『Progress』はあくまでも二人のストーリーを念頭に置きながら5人のTake Thatとしての作品である事が強調される仕上がりになっています。この辺りのストーリー性も『Progress』が多くの人々から受け入れられる要因になっているのですが、『Progress』は単純にサウンド面でも高い評価を受けており、これはプロデュースを手掛けたStuart Priceの手腕によるところも大きいと思います。Stuart Priceがプロデュースを手掛けたScissor Sisters『Night Work』Kylie Minogue『Aphrodite』Brandon Flowers『Flamingo』は、いずれも2010年を代表するヒット作になっており、Stuart Priceの2010年の総決算的なアプローチが『Progress』には詰め込まれている様に思いますし、2010年はTake Thatの年であるとともに、Stuart Priceの年であったと後世に伝えられる事になると思います。
という事で2010年のポップミュージック、そしてダンスミュージックを語る上で外せない作品となったTake That『Progress』ですので、この作品を聴かずして2010年を語るメディアは一切信用しなくても良いと断言しておきます。
5人の進歩を表現したジャケットは異彩を放っていますが、やはり原点に戻ってヌードな事が高評価。

Progress

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〈12/1追記〉国内盤は本日UNIVERSAL MUSICから発売でした。文中訂正致しました。
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