weezerのレアトラック集『Death to False Metal』で聞こえる純正のサウンド

weezerのレアトラック集『Death to False Metal』のレビューでも。
新作『Hurley』が発売されて間もなく発売されたこの未発表曲集は、weezerを形作る要素が分かり易い形で表現されており、その歴史を顧みる際に必要不可欠な音源だといえると思います。確かに『Death to False Metal』はいかにもレアトラックという風情で特有の粗さがあるのですが、デモバージョンの類よりもクオリティは高く、所謂オルタナティブ・ロック的なハードなアプローチが印象的で、メロディ自体もRivers Cuomoの書くweezerらしいフックが見え隠れする佳曲が多く、楽曲の最終形を聞きたくなるものが多く含まれています。
楽曲が作られた年代もかなりばらけているのですが、全体を覆う『Death to False Metal』の粗さが、逆に統一感を持たせる結果になっており、一枚の作品として聞いても違和感が無いですし、Rivers Cuomoの歌唱法も元来のweezerらしいもので、最新作『Hurley』で見られたweezerの再構築ではなく純度の高いweezerの楽曲を楽しむ事が出来ます。個人的にはモータウンビートに接近した「I'm a Robot」が最高で、他にもハードなサウンドを持ちつつ終盤のギターソロやポップなコーラスが賑やかにアルバムの冒頭を飾る「Turning Up The Radio」、実にweezerらしい節回しとコーラスワークが印象的な「I Don't Want Your Loving」、近年のweezerには見られないシンプルで美しいメロディのバラード「Losing My Mind」が良い出来だと思います。また、Toni Braxtonのカバーである「Un-Break My Heart」weezerのカバー曲の中でも出来が良い部類ですし、この辺の楽曲にweezerの今後の可能性やまだ出し切っていないポテンシャルが秘められていると思います。
当然『Death to False Metal』weezerの新作的な受け入れられ方はしないでしょうが、コレクターズアイテムの域は出ていますし、シングルのカップリングも神がかっていた時代のweezerを髣髴させる興味深い音源である事は確かなので、『Hurley』がシックリこなかったファンに方にもお勧め出来ます。そしてweezerを聞いた事が無い人には、オリジナルアルバムをファーストアルバムからある程度聞いてからのご購入を一応お勧めしておきます。
もちろん『Death to False Metal』(偽メタルに死を)のタイトルは、アメリカのヘヴィメタルバンドManowarの合言葉から。

Death to False Metal

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