weezerが『Hurley』で完成させた再構築
国内盤も発売されましたのでweezerの新譜『Hurley』のレビューでも。
最初に結論を書くと非常に評価を下すのが難しいアルバム。自分の見る限り、今回のアルバム『Hurley』に対する評価は概ね好評だし、我等がweezerの大復活的な論調のものも数多く見られます。確かに、weezerの大きな魅力の一つであるポップセンスは見事に発揮されているし、明るくて爽快感もあって振り切った様な内容に『Hurley』は仕上がっており、多くのリスナーに歓迎されるのも当然だと思います。
『Hurley』の最大の特徴は、Rivers Cuomoが外部のミュージシャンと共作するスタイルでほとんどの楽曲が作成されている事(10曲中8曲)で、このスタイルが今までのweezerを一旦リセットし、客観的なweezerを再構築する為の大きな役割を果していると思います。参加しているミュージシャンはDan Wilson、Desmond Child、Greg Wells、Ryan Adams、Rick Nowels、Tony Kanal、Jimmy Harry、Linda Perry、Mac Davisと多彩な顔ぶれで、自分のサウンドスタイルを打ち出すというよりも、weezerのサウンドを再構築する為のアプローチの手助けをしている印象で、それぞれの個性が強力に打ち出されているかといえばそうではありません。むしろRivers Cuomoが一人で作った「Memories」と「Unspoken」が、当たり前の様に純度の高いweezerサウンドとメロディラインを聞かせてくれているし、『Hurley』の中ではこの2曲が大きなポイントになっていると思います。共作した楽曲群の中ではSemisonicのDan Wilsonと共作した「Ruling Me」とGreg Wellsと共作した「Where's My Sex?」がweezerのサウンドの本質を限りなく忠実に再現した好トラックだと思います。また、『Hurley』で新境地というか面白みがあったのは「Hang On」という楽曲で、Hurdy Gurdy (ヨーロッパの民族音楽で多用される弦楽器)が暖かみをサウンドに与えていて、今までのweezerとは異なる新たな魅力を感じる事が出来ます。
前々作『Red Album』はRivers Cuomo以外のメンバーが作った楽曲を多く収録し、そこから一歩進んで前作『Raditude』では外部からライターやプロデューサーを積極的に取り入れた訳ですが、『Hurley』では『Raditude』の路線を更に推し進めて、外部の血を大胆に取り入れました。前述した通り、今までのweezerをリセットするという意味で『Hurley』は成功しているのですが、同時にweezerのバンドとしての意欲や向上を、どの部分で求めていくのかが気に掛かります。『Hurley』で再構築を完了させたweezerですので、当然、既にレコーディングに入っていると報道された次の作品では、また新しい試みを見せてくれると思いますし、その辺は非常に楽しみではあるのですが、次の作品では才力みなぎったRivers Cuomoのソングライティングを見てみたいというのも正直な感想。
こちらのデラックスエディションはColdplayのカバー「Viva la Vida」が収録ですので余裕のある方はこちらがお勧め。
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