Hurtsの『Happiness』の完成度とオサレっぷり

Hurtsのデビューアルバム『Happiness』が恐ろしいほどのニューロマンティックだったのでご紹介。
果たしてこのサウンドを2010年に聞いて、Hurtsが新人のグルーブだという事を見破れる人がどれくらい居るだろうか。そのくらい『Happiness』サウンドは綿密に80年代のサウンドを再現しており、完成度という点では今年聞いた新人のアルバムとしては、ずば抜けていると思います。2000年代以降には80年代サウンドの再評価の機運が高まり、80年代のテイストを取り入れたサウンドは、それこそ溢れかえっていた様に思いますが、それらのサウンドはどちらかと言えば、どれだけ上手く80年代を消化するかという事に重きを置いていた様に思います。その中では80年代風、ニューウェイブ風といったサウンドが軽薄に聞こえがちだったのも確かで、80年代サウンドの持つ偏った側面ばかりが目立っていた様に思います。それに比べるとこのHurtsという二人組は、完全なる80年代の再現に成功しており、ポップミュージックの機能性を優先させながらも、シンセサイザーの響きも重厚で、地に足の着いた異様に安定感のあるアルバムを作り上げる事に成功しています。シングルになった「Wonderful Life」「Better Than Love」の様な即効性の高い楽曲は、確かに印象的なのですが、他にも「Stay」の様な高揚感のあるミドルチューン、Kylie Minogueをゲストに迎えつつもその存在感に飲み込まれていない「Devotion」、静かにアルバムの幕を下ろすピアノとストリングスが印象的なバラード「The Water」と隠しトラックに当たる「Verona」など、基本的にはダークでメランコリックなサウンドで統一感を持たせながらも、曲調には幅がある為にアルバムの中での聴きどころも多く、構成力にも優れているとアルバムに仕上がっていると思います。
ただ、逆に言えば新たな驚きや革新的なサウンドHurtsに求めるとしたらそれは難しくて、圧倒的な完成度と引き換えに近似感のあるサウンド(例えばDepeche Modeの名前を比較の対象として挙げるのは容易)にはなっていると思います。でも、二兎追うものはなんちゃらで結局のところどっちつかずになってしまうミュージシャンに比べると、Hurtsの選んだ方向性は正しかったのだと断言出来る内容に『Happiness』は仕上がっており、UKチャートで4位を記録したのを始め、各方面で話題になっているのも当然ではないかと思います。
ちなみに日本でもSONYから国内盤の発売も決まっており、しかも深夜とはいえドラマ「クローン ベイビー」で、主題歌に抜擢されたのを始め、劇中で全面的にその音楽が使われる様で、最近の洋楽では異例ともいえる推される存在にHurtsはなっています。
見た目もオサレな二人組。国内盤もミョーに力の入った全5曲のボーナストラック入り。SONYのHPには「おハツです!大注目の男前ドラマチック・ポップ・デュオ見参!」と無駄な駄洒落が掲載されているので必見

ハピネス

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