Kula Shakerが『Pilgrim's Progress』で完全復活したので振り返る

Kula Shaker『Pilgrim's Progress』が穏やかながらポジティブな一枚になっていたのでご紹介。
90年代に絶大な人気を誇ったKula Shaker(デビューアルバム『K』は全英第1位を記録)だったのですが、アルバム2枚を発表後にあっさりと解散し、多くのリスナーを驚かせました。その後、中心人物のCrispian MillsThe Jeevasを結成して、こちらもアルバムを2枚発表し解散。そしてJeevas解散後の2004年にKula Shakerを再結成し、2007年にアルバム『Strangefolk』を発売しています。そして再結成後の2枚目、Kula Shakerとしては通算4枚目のアルバムが今回ご紹介する『Pilgrim's Progress』という事になります。
とまあざっくりとKula Shaker及びCrispian Millsの活動を振り返ってみたのですが、その存在は本国イギリスではかなり薄くなっている様で、UKでのJeevasのセールスは振るわなかったですし、前作『Strangefolk』の評価、セールスともに低調に終わった影響なのか、今作『Pilgrim's Progress』も大々的に取り上げられている様子も無く、チャートでも117位と低調なポジションを記録しています。しかしここ日本ではKula Shakerの根強いリスナーは多く、セカンドアルバム『Peasants, Pigs & Astronauts』の時点で本国以上のセールスを日本では記録しており(14万枚)、Jeevasのデビューアルバム『1,2,3,4』も10万枚のセールスを記録するなど、日英で逆転現象が起きるほどの温度差がある不思議なバンドでもあります。
という事で本題の『Pilgrim's Progress』の内容です。前作『Strangefolk』はハッキリ書くと中途半端な仕上がりで、自分たちのやりたい事と求められているKula Shaker像の間で苦悩する姿が浮き彫りになった様な作品で、完全復活といえる内容ではなかったのですが、今作『Pilgrim's Progress』は完全復活と言っても問題の無い内容に仕上がっています。全体を通して穏やかなフォークサウンドにストリングスが効果的に使われている『Pilgrim's Progress』では、Kula Shakerの持ち味でもあったハードなギターサウンドは陰を潜めており、サウンド面ではインドからの影響もそれ程感じられず、路線でいえばセカンドアルバム『Peasants, Pigs & Astronauts』を更に推し進めていった様な印象を受けます。サイケデリックで幽玄さのあるアルバムではあるものの『Pilgrim's Progress』がどこか優しさに満ちてポジティブに聞こえるのは、例えばリコーダーが聞こえてきたり、暖かみのある鍵盤楽器が印象的だったりと、まるで森の楽団が演奏している様な雰囲気を持っている事が大きいと思いますし、歌詞を読む限り決してポジティブとは言えない世界観の『Pilgrim's Progress』サウンドによって間逆の印象すら与えている事は最大の特徴だと思います。Crispian Millsストーリーテラー、そしてメロディメーカーとしての才能も発揮出来ている『Pilgrim's Progress』は、ベルギーでのレコーディングや、バンドのセルフプロデュースが功を奏する結果にもなっていますし、Kula Shakerの新たな可能性を見せてくれた意欲作に仕上がっているのは間違いないので、興味のある方、あった方、どちらにもお勧めできると思います。あとDonovan『A Gift from a Flower to a Garden』とか好きな人はぜひどうぞ。

4曲のボーナストラック入りで独自の曲順の国内盤。相変わらず日本ライクなバンド。

ピルグリムス・プログレス

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