The Gaslight Anthemの『American Slang』で濃縮されたロックンロール

The Gaslight Anthem待望のサードアルバム『American Slang』が素晴らしかったのでご紹介。
泥臭くて男臭くてロック臭をプンプン撒き散らしているGaslight Anthemは、その愚直過ぎる存在が現代においては逆に新鮮で、ワーキングクラスヒーローを地で行く様なその存在感も含めて、現在から未来においてアメリカのロックシーンで注目を集め続けるバンドだと思います。
ボーカルのBrian Fallonの熱いボーカルスタイルに隠れがちですが今作『American Slang』のメロディは相当に親しみやすいもので、性急な楽曲はもちろん、バラード調の曲にもそのポップセンスが遺憾なく発揮されており、何よりもその事が『American Slang』最大の特徴だと思います。Gaslight Anthemを語る上で、どうしても同郷のBruce Springsteenの名前は外せないですし、ボーカルスタイル、歌詞の世界観、サウンドの傾向、そのどれもがBruce Springsteen影響下にあるのは誰もが知るところなのですが、今作『American Slang』に関してはその事以上に楽曲の素晴らしさが目立つ仕上がりになっており、胸がすく作品に仕上がっています。Bruce Springsteen自体が様々な音楽の要素を上手く消化しているアーティストですが、同様にGaslight Anthemも、過去のロックンロールの歴史を振り返る様に様々なアーティストの要素を消化しており、ざっと聞いただけでもBob DylanBilly Braggに通ずるフォークミュージックの要素は勿論の事、The ClashRamones、そしてThe Beatlesの影響も今作『American Slang』では色濃く出ている様に思います(「Bring It On」という楽曲では「wait a minute,wait a minute」という歌詞が印象的だったりと、非常に微笑ましい)。
前作『The '59 Sound』で一気に注目を集めたGaslight Anthemがさらに大きく躍進した作品が今作『The Gaslight Anthem』で、全10曲34分の中にロックンロール要素がギッシリと濃縮されて詰まっているといっても過言ではなく、今年に入って手放しで傑作といえる作品にあまり出会わなかった自分にとっても、『American Slang』は間違いなく年間ベスト10に入る傑作(ちなみに最近届いた音源ではあと二作品ほど傑作があったのは嬉しい誤算)。興味がある方もそうでも無い方にも自信を持ってお勧めできる一枚。

American Slang

American Slang

アコースティックバージョンでなお映えるこの説得力のある歌力は凄い。

物凄い余談ですが、Gaslight Anthemの佇まいや歌を聞いていたらGlasvegasを思い出しました。そのポジションというか存在感が少し通じているのかもしれません。Glasvegasが英国の伝統的なスピリッツを継承する代表的なバンドだとしたら、Gaslight Anthemはその米国版といえなくもないかと。