Chumbawambaの『ABCDEFG』の変わらないアナキズム

Chumbawambaといえば「Tubthumping」の大ヒットが有名ですが、決して一発屋ではなく継続した活動を続けているのでご紹介。新作『ABCDEFG』は通算17枚目のオリジナルアルバムで、30年近いキャリアを誇るChumbawambaだけに実に深みのある内容になっています。 「Tubthumping」という飛びぬけてポップな曲がChumbawambaのキャリアの中で異色の楽曲である為、誤ったイメージで語られる事が多いのですが、アナキズムに満ち溢れた精神性は、その親しみやすいメロディとは裏腹に強力な主張と毒を含んでいます。楽曲の方はフォークを貴重としてストリングスが響き渡る非常に穏やかな内容で、Belle & Sebastianと聞き紛う様な楽曲が並んでいます。ボーカルも非常に優しげなアカペラを主体にした美しいコーラスワークが印象的で、トラッドミュージックの様な暖かみに包まれており、終始落ち着いた流れでアルバムは進行しています。特に「Voices, That's All」「Ratatatay」といった楽曲は飛びぬけたメロディの美しさを持っており、名曲といえると思いますし、非常に短い楽曲だけでコンパクトにまとまった『ABCDEFG』は良質のフォークアルバムになっています。
とはいっても、単に美しいフォークアルバムになっていないのがChumbawambaChumbawambaたる所以で、今作もそのサウンドとは対照的に辛らつで過激な歌詞が並んでいる様です。詳細の歌詞が分からない為、細かいニュアンスは拾えていませんが、例えばMetallicaJames Hetfieldを揶揄する「Torturing James Hetfield」という楽曲があったり、British National Party(イギリス国民党)に向けた「Dance, Idiot, Dance」があったりと、変わらないアナキズムが展開されている様です。WikiオフィシャルHPを見る限り、8人居たメンバーも一時期は4人になったものの現在は5人で活動している様で、メンバー構成の変化を機に作風がアコースティックな方向にシフトしており、2005年発売の『A Singsong and a Scrap』から2008年の『The Boy Bands Have Won』とその路線は続いており、 その路線の決定盤ともいえるのが今作『ABCDEFG』で、サウンド面では新たなピークを迎えているように思います。
強烈な信念の元に実にマイペースに継続されているバンドが間逆の一発屋のレッテルを張られているのは皮肉というかどうなってるんだろうと思いますし、その政治的思想の是非はさて置き、サウンドだけでも十分楽しめる一枚だと思いますので、ぜひ多くの人に聞いて頂きたいと思います。
ジャケットアルファベットがカラフルでポップなのですが、内容は一癖も二癖もあるのが、いかにもChumbawambaらしいですね。

ABCDEFG

ABCDEFG

内ジャケットにはEric Olsonの「Music is what life sounds like」の一文が。この言葉が強く印象に残る。