She & Himの『Volume Two』で染み入るこの頃

She & Himのセカンドアルバム『Volume Two』のレビューがようやくまとまったのでご紹介。
正直なところShe & Him『Volume Two』に関しては国内盤のライナーノーツや、そのライナーの執筆者である岡俊彦さんのThe Muffs' Fanpage In Japanを見て頂ければその魅力が十分に伝わると思いますが、一応自分なりの感想文を。
『Volume Two』の第一印象としては前作『Volume One』と変わらないながらも大きく変わったなという印象を受けました。基本的なソングライティングの方向性や楽曲の持つ雰囲気はそのままですが、バンドサウンドが中心になっており、ストリングスを多用する事でシッカリとした土台がありながらも全体的に広がりのあるサウンドになっていると思います。先行で公開されていた「In the Sun」はPVも含めて素晴らしいのは勿論(Tilly and the Wallのコーラスもはまってますし、最後のギターソロでM. Wardが良い仕事していますね)ですが、3曲目の「Don't Look Back」の名曲振りが印象に強く残りました。「Don't Look Back」は多重コーラスとストリングスが跳ねる様な楽曲で、その歌詞とは裏腹に多幸感に満ち溢れたウォール・オブ・サウンドが素晴らしい仕上がりです。
今作『Volume Two』は楽曲の様々な背景もあり、サウンド面でも大きな進化があるわけですが、一方でZooey Deschanelのボーカルが際立つボーカルアルバムでもあると個人的には思っています。楽曲の隅々にZooey Deschanelのボーカリストとしての著しい成長と自信が行き渡っていて、ソングライターとしての充実だけでなく、ボーカリストとしての才能も大きく開花しており『Volume One』ではあまり感じなかったボーカルの強い存在感を感じます。個人的にはZooey Deschanelって、ありそうだけどそうはないタイプのボーカルだと思っていて、クラシカルなポップスシンガーを基調にしながらも、その揺らぎのあるジェントルな声質は唯一無比の武器として、今後はもっとクローズアップされると思います。Zooey Deschanelの声は大人びた様に聞こえたり、奔放で純粋無垢な少女の様に聞こえたりと、その演技同様に様々な表情を見せてくれており、独特のフワフワと漂う様な浮遊感があって、聞いている人をホッコリとさせるその歌声は聞けば聞くほど染み入る素晴らしい才能だと思います。『Volume Two』には前作同様にカバー曲が収録されており、そのどれもがまるでオリジナルかの様に輝きを放っていて、尚且つ他のオリジナルの楽曲と違和感無く肩を並べている様に聞こえるのは、カバー曲をShe & Himのものにしてしまっているのと同時に、ソングライターとしての力量も先代に肩を並べている証明にもなっている訳で、つまり、Zooey Deschanelは既に時代を代表するソングライターとしての才能も『Volume Two』で開花させてしまっていると言っても決して言い過ぎではないと思います。
とまあ、思わずZooey Deschanelの事ばかりを書いてしまい、実際に彼女の才能が際立つアルバムではあるのですが、『Volume Two』ではM. Wardのプロデュース及び裏方としての堅実な支えを今まで以上に感じますし、Zooey Deschanelを活かしきったこのサウンドプロダクションは見事だと思います。あと「Ridin' in My Car」NRBQのカバー)がデュエットという形式を取っていて、M. Wardのボーカルも楽しめるのですが、このカバーがアルバムの中でも良いアクセントになっていると思います。
購入するなら国内盤。充実のライナーノーツとボーナストラック付き。ボーナストラックの「I Can Hear Music」RonettesからBeach Boys、そしてFreddie Mercuryへも繋がる見事なカバーで必聴。

ヴォリューム・トゥ

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