Remi Nicoleの『Cupid Shoot Me』が打ち抜いたハート

Remi Nicole『Cupid Shoot Me』が物凄いガールズ・ポップに仕上がっていたのでご紹介。
最近Remi Nicoleのセカンドアルバム『Cupid Shoot Me』ばかり聞いています。Remi Nicoleは2007年に『My Conscience & I』でデビューしたノースロンドン生まれのシンガーソングライター。『My Conscience & I』ではアコースティックな響きを持ったギターサウンドが主体になっていたのですが、セカンドアルバムで完全に化けました。前述の通り、『Cupid Shoot Me』内容は完全なガールズ・ポップアルバムに仕上がっており、そのサウンドの概要は前作から大きな変貌を遂げています。この背景にはRemi Nicoleの影響の受けた音楽が深く関係しているのは当然で、シングル「Standing Tears Apart」では「You Can't Hurry Love」「Go Mr Sunshine」では「Be My Baby」をシンブルのカップリングとして収録している事からも、ガールズ・ポップに対する愛情はヒシヒシと感じる事が出来ていたのですが、ここまで振り切ったアルバムを作り上げるとは思いませんでした。ちなみにRemi Nicole『St Trinian's』サウンドトラックでは「Teenage Kicks」をカバー。シングル「Rock 'n' Roll」にはRazorlightのカバーである「Before I Fall To Pieces」を収録しているという事で、純粋なロック娘でもあるわけで、その辺の多様な音楽的背景も今作『Cupid Shoot Me』では遺憾なく発揮されていると思います。まあギターを購入したキッカケもNoel Gallagherらしいので、基本的にはロックンロールがベースにあるのだと思うのですが。
アルバム『Cupid Shoot Me』は冒頭の「Cupid Shoot Me」、「In My Dreams」、「Nice Boy」の流れから、もう笑うしかない程の完璧なガールズ・ポップで、ここまでハッキリと60年代のガールズグループに忠実なドゥーワップサウンドを打ちだしているのが潔くて気持ちが良いです。もちろんロックンロールな要素も滲み出ているものの、隠し味程度(つまりそれはロカビリー的な要素で60年代のガールズ・グループもそうであったように)で基本的な指針は揺らぐ事無く一貫性のあるアルバムに仕上がっています。正直なところ、この手のジャンルのサウンドは使い古された感もあるし、新鮮味は薄いものになりつつありますが、Remi Nicoleの凄いのは全ての楽曲を自身が手掛けながらも、その完成度が高く個々の楽曲の出来にムラが少ない事で、この手の作品に有りがちな操り人形スタイルでなく、アーティストとして確固たる意思を持ってアルバムを作り上げています。プロデューサーも自身が影響を受けたRod Stewart、そしてTina TurnerDiana Rossも手掛けたMark Taylorに依頼するなど、人選にも『Cupid Shoot Me』の徹底した姿勢は感じる事が出来ます。
また、Remi Nicoleのソウルフルな歌声はMacy Grayを髣髴(まあ、声質自体が似ているんですが)させ、『My Conscience & I』の時点ではSheryl Crowの様なシンガーになるかと思っていたのですが、想像を遥かに超えたボーカリストとしての可能性を『Cupid Shoot Me』で発揮しています。
正直なところ、このジャケットを見た時、そのサウンドとのギャップに驚かされました。どうみてもR&Bなジャケットはジャケ買いという観点から見れば、どちらかというと損ではないかと思っていたのですが、恐らくこのジャケットはRemi Nicoleの狙い。Remi Nicoleはオーストラリア、トリニダード、イギリスの血を引き継いているらしく、その外見から偏見や先入観を持たれる事が多かったのではないかと思います。だからこそ、あえてこのジャケットでポップなサウンドをやる事がアンチテーゼになっているのだと思うし、意識的な裏切りと偏見や先入観の否定を打ち出しているのだと思います。カッコ良いぜRemi Nicole

Cupid Shoot Me

Cupid Shoot Me