Basement Jaxxの『Scars』、Simian Mobile Discoの『Temporary Pleasure』、Felix Da Housecatの『He Was King』をまとめる(後編)

という事で前回の続きです。
Simian Mobile Discoに関してはデビューアルバムの『Attack Decay Sustain Release』の上手くロックを消化した感が気に入っていたので、セカンドアルバム『Temporary Pleasure』にも期待したのですが、サウンド的には、かなり進化した印象を受けました。『Attack Decay Sustain Release』は良い意味でガチャガチャしていて、それが有機的なサウンドとしての面白みを放っていたと思うのですが、『Temporary Pleasure』はかなり洗練されたというか、スマートなサウンドに仕上がっていると思います。本人達が至って真面目に作品を作り上げたのは感じ取れますし、クオリティ自体は上がっていると思うのですが、個人的にはオモチャ箱の様な楽しさのあった『Attack Decay Sustain Release』の要素をもう少し継承して貰いたかったところ。でニューウェイブを意識したサウンドアプローチも良いのですが、やっぱり「10000 Horses Can't Be Wrong」の様などこかチープなシンセや遊びの要素こそSimian Mobile Discoの大きな武器だと思います。

Temporary Pleasure: Limited Edition

Temporary Pleasure: Limited Edition

Felix Da Housecat『He Was King』「We All Wanna Be Prince」という楽曲が収録されている事からも分かるようにPrinceに大きな影響を受けた作品。「Spank U Very Much」なんかもPrince「U」使いの影響だろうし、当てずっぽうな推測ですが『He Was King』というタイトル自体が何となくPrinceを暗示している様な気がします。といってもファンクな要素があるかといえばそうでもなく、キラキラとしたエレポップとハウスの融合といったサウンドに加えてテクノの要素も強めに入っており、正統派のダンスアルバムとして『He Was King』は展開していきます。Felix Da Housecatはハウスの下世話さや馬鹿馬鹿しさを的確に表現している割には、意外とサウンドは上品でスマートだったりするので、その落差も楽しいですし『He Was King』は非常に間口の広い作品に仕上がっているので、もう少し評価されても良いと思っています。

He Was King

He Was King

とまあ、まとめてご紹介しましたが、ある程度のキャリアを持ったアーティストは段々とメディアにも取り上げられなくなってきますし、移ろいの早いダンスミュージックシーンの中では特にその傾向があるのだと思います。中堅どころでもあるこの3組(Simian Mobile Discoはキャリア自体は長いですし)は、そんな中でもクオリティの高いものを作っています(奇しくも三組とも今回のアルバムが洗練されたサウンドになっているのも興味深い)ので、興味のある方、興味をなくしていた方もぜひどうぞ。

「We All Wanna Be Prince」のPVでの胡散臭いなりきりPrinceが素敵。