Bruce Springsteenのトリビュート盤『Play Some Pool Skip Some School Act Real Cool』はそうは無い取り合わせ

予告通りBruce Springsteenのトリビュート盤『Play Some Pool Skip Some School Act Real Cool』でもご紹介。
全38曲で二枚組という圧倒的なボリュームのトリビュート盤ですが、面白いのはBruce Springsteenという超メジャーなアーティストをカバーしている面子がほとんど無名のアーティスト達という事で、ここまで落差のある取り合わせはそうは無い。流石に全曲解説をやる気力がないので簡単に全体像を。
『Play Some Pool Skip Some School Act Real Cool』に参加しているインディーズのアーティストはジャンルでいえばフォークやパワーポップ畑の人達が多いと思うのですが、作品の全体のイメージも個々のアーティストのジャンルに近い雰囲気に仕上がっているのではないかと思います。正直なところ、この取り合わせで上手くいく事の方が想像出来なかったのですが、聞いてみてビックリ、意外と統一感もあり違和感無く聞き通す事が出来ます。恐らくBruce Springsteenの楽曲を知らない人、いや多少知っている人だとしても、一聴しただけでは普通のインディーズコンピレーションアルバムと聞き紛う事と思います。そのくらい違和感の無い内容だし、フォーキーなアレンジは当然としてもローファイだったりエレクトロなアレンジにBruce Springsteenの楽曲が馴染んでいるのが凄い。特にBruce Springsteen代名詞的な楽曲のカバーは思い切った方向転換をしており、これがまた微笑ましくて許せてしまいます。例えばGlam Chops「Born In The USA」の掛け声は脱力もの(Travis「Tied to the 90's」みたい)だし、Lucinda Black Bear「Born To Run」も熱さが感じられない脱力系、Schoolのローファイで浮遊感のある「Hungry Heart」の様なカバーもあります。誰一人としてBruce Springsteenに似せようとしていないし、原曲を崩し過ぎたものもあるけど、有名曲が多く基本がしっかりしていますから、多少の無茶も全体の統一感で何となく聞けてしまいます。あとは女性ボーカルの比率も意外と高く清涼感があるのもミソかと思います。
このトリビュートアルバムを聞いて思ったのはBruce Springsteenの書くメロディがいかに普遍的なものであるかという事。もしBruce Springsteenの80年代の熱いイメージだけに囚われている人がいるのであれば、このアルバムから入ってみるのも悪くないと思います。Bruce Springsteenを意識せずに聞けば、異様にメロディが書けている優れたインディーズのコンピレーションアルバムともいえますので。自分もこのアルバムをきっかけにオリジナル作品に辿り着くアーティストが見つかるのではないかと思うし、今までにありそうでなかったトリビュート盤のかたちを提案できているのではないかと思います。

Bruce Springsteen Tribute: Play Some Pool, Skip Some School, Act Real Cool (Re-Issue)

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