Patrick Wolfの『The Bachelor』がぶっ飛んだ一枚になっていない理由

Patrick Wolfの新作『The Bachelor』について書こうと思ったんだけど、困ったなこれどうしよう・・・
とまあ素直な気持ちを吐露しながらもレビューです。前作『The Magic Position』に収録の表題曲「The Magic Position」の一発で持っていかれたPatrick Wolfなんですが、新作『The Bachelor』はダウナーな印象が色濃く出ており、性急なダンスビートに様々な楽器が絡んでいく展開。コンセプチュアルな内容といえばそうなのですが、好き勝手に縦横無尽に駆け回る様な作品で、行き着くところまで行き着いた感があります。Patrick Wolfの場合、ぶっ飛んだコスプレだったり、性的な嗜好を包み隠さずに開けっ広げにしている点は非常に好感が持てるのですが(最近は尻も丸出しだし)、そのせいかビジュアル面での注目が集まるばかりで、サウンドに対する正統な評価は置き去りになっている部分もあります。今作『The Bachelor』Alec Empireの参加などからも分かる通り、ともすればゴリゴリで暗いビートの作品になるところを、コーラスや弦楽器を絶妙なバランスで加える事で軽やかさを加えていますので、重いだけの聞き難い作品にはなっていません。この辺がPatrick Wolfの非凡なる才能を感じる部分であるのですが、その他にも前作『The Magic Position』にもEdward LarrikinMarianne Faithfullが参加していたりと、人選の妙もPatrick Wolfは持ち合わせている様で、今作も女優のTilda SwintonEliza Carthyなどがゲストとして参加しており、ぶっ飛んでいるようで実はクレバーなバランス感覚とプロデュース能力の持ち主なのだと思います。
個人的にはもう少しメロディが書く才能があると思っているので、その辺は来年に発売される予定の次作『The Conqueror』に期待したいと思います。

以前記事にしたアルバムに対する投資を行った人へのクレジットが別紙でライナーに導入されていました。いつの間にかにページが無くなっており、結局自分は通常の輸入盤を購入したのですが、一応成功という事なのでしょう。

The Bachelor

The Bachelor

国内盤も出るみたい。日本で人気出てるのですかね。

ザ・バチェラー

ザ・バチェラー

Patrick Wolf - Hard Times