Regina Spektorの『Far』は2009年日常のサウンドトラック

Regina Spektorの新作『Far』が個人的な過度の期待を裏切らない快作だったのでご紹介。
今作は様々なプロデューサーが参加している為、そのアルバムの統一感や世界観を少々心配していたのですが、この人にかかれば全くもって無用の心配だった事が非常に嬉しい。ちなみにプロデューサ-陣はMike Elizondo、Jacknife Lee、Jeff Lynne、David Kahneの面々で、旧知のDavid Kahneはもちろん、嬉しい人選でもあるJeff LynneELO)の名前が上がったのには頷けたものの、いまや売れっ子プロデューサーであるJacknife Leeとの組合せだけが非常に心配されました。もう一人のMike Elizondoはヒップホップのプロデュースが中心とはいえ、Fiona Appleの様な女性シンガーのプロデュースもやっていますので、良い方向に行く予感があったのですが、Jacknife Leeが近年プロデュースした作品と比べて、Regina Spektorの音楽との接点があまり見られないというのが心配の種でした。だけどRegina Spektorは完全にプロデュースされる側ではなく、プロデューサー自体をアクセントというか自分の音楽の中に取り込んでいる感があり、それぞれのプロデューサーとの距離感もバッチリで全くもって違和感無く一枚を聞き通す事が出来ました。それは『Far』は今までのRegina Spektorの作品の中でも、最もシンプルに歌が聞こえてくる仕上がりになっている事も大きくて、Regina Spektorはその歌声とピアノ一つで自身を表現する事においては他の追随を許さない存在になっていると感じました。相変わらず、歌詞の韻の踏み方が気持ちが良く、時にピアノに寄り添う様にしなやかで弾むように楽しげで、時にトリッキーなメロディラインが飛び出して楽器としての声を最大限に活用する事によって、特別なサウンドプロダクションに頼らなくてもその歌で統一感を生み出しているのが素晴らしく、正にRegina Spektorの真骨頂といえる作品になっていると思います。
正直、全曲の流れで素晴らしいと思える作品なのですが、Michael Jacksonの訃報と重なって「Dance Anthem of the 80s」という楽曲が特に染みます。多分、聞く人によって其々の楽曲の捉え方が変わってくる作品で、一言で言えばまさに21世紀の日常のサウンドトラックといった作品。
ジャケットからいってもJohn Lennonのwhite roomのピアノに『Live Peace in Toronto, 1969』のジャケットが映りこんだ様なジャケットだし、Beatlesのリマスター盤が発売になる2009年に相応しい傑作。ちなみに自分が購入したのはボーナストラック2曲とPVが収録されたDVD付きのspecial editionで、ボーナストラックの出来も良くPVも素敵ですのでこちらをお勧め。

Live Peace in Toronto 1969

Live Peace in Toronto 1969

Far (W/Dvd) (Spec)

Far (W/Dvd) (Spec)

正直、最初見たときは林葉直子みたいな人だなと思っていたのですが、見慣れるととてもチャーミングだ。
Dance Anthem of the 80s - Regina Spektor