Idlewildの『Post Electric Blues』は集大成の祝福を鳴らす鐘

Idlewild『Post Electric Blues』を手にした日本人は、現時点ではそれ程多く無いと思うのですが、その人達はきっと大満足しているのではないしょうか。多分に洩れず自分もその一員で、早速レビューを書いていきたいと思います。
まず、頭三曲「Younger Than America」「Readers & Writers」「City Hall」が恐ろしいくらい陽性のサウンドで最高。「Younger Than America」はスケール感がありながらもIdlewildらしいギターが鳴り響く祝福のサウンドでこの曲でコーラスをとるHeidi Talbotの歌声も効いています。「Readers & Writers」はいきなりホーンで幕を開けてマーチが鳴り響く様な明るい楽曲。「City Hall」もサビとコーラスが印象的で両曲ともシングルカット出来そうな良曲でアルバムとしては最高の滑り出し。
そして何といっても4曲目の「(The Night Will) Bring You Back To Life」が素晴らしい。Roddy Woombleのソロアルバムの流れを汲みながらも完全にIdlewildサウンドとして消化しており、Rod Jonesとのボーカルの掛け合いも気持ちが良い。
「Dreams Of Nothing」は一転してIdlewildの持ち味であるロックチューンでちょっとニューウェイブ的な隠し味が含まれた前作『Make Another World』の系譜の楽曲。「Take Me Back To The Islands」は中盤のハイライトとなる美しい曲でRoddy Woomble節が如実に出ている楽曲。この曲でもHeidi Talbotがコーラスをとっており、ヴァイオリンはJohn McCuskerというスコティッシュフォークの最高峰。
「Post-Electric」は前半は非常にオーソドックスに進行するのですが、一転して後半はギターが鳴り響きまくります。その部分はPost RockやElectric的と言えなくはないですが、長尺にしないですっきり終わるところが実にIdlewildらしい一曲。
「All Over The Town」「To Be Forgotten」Idlewildのロックサイドの側面が表れている比較的シンプルな楽曲で、このアルバムを象徴する様にギターに重きが置かれているものの、アルバムの中では一服の清涼剤の様な役割を果しています。
「Circle In Stars」『Post Electric Blues』の中では異色といえる楽曲で、スコティッシュから距離を置いた様なカラッとした太陽を感じさせる明るい仕上がりが新境地。
最終曲の「Take Me Back In Time」はエンディングに相応しい壮大な楽曲でアルバムをしっかりとまとめてくれています。その後、プレオーダーだけのボーナストラック「No Wiser」が収録されているのですが、この楽曲もアルバム本編に入っていてもおかくない良曲で、プレオーダーした甲斐があったというもんです。
また、『Post Electric Blues』の大きな特徴の一つとして挙げられるのがコーラスワークの素晴らしさで、楽曲のメロディの良さを更に引き立たせている印象。Idlewildを語る時に引き合いに出される偉大なるガレージバンドR.E.Mの、しかも全盛期のMichael StipeMike Millsのそれを髣髴させる域にまで達しているといえると思います。前作『Make Another World』のロックな側面と前々作『Warnings/Promises』の暖かみのあるサウンドRoddy Woombleのソロ活動でのスコティッシュトラッドの要素が完璧に融合したのが今作『Post Electric Blues』で、Idlewildの集大成的な到達点だといえると思います。そしてその到達点でIdlewildはR.E.Mが辿り着けなかったところにすら辿り着いているといっても過言ではない気がします。
とまあ思わず全曲レビューになってしまいましたがそれくらい良いアルバムなので、買い逃した人は一般発売をしばしお待ちを。