Art Brutが『Art Brut vs. Satan』で歌ったあのバンド

『Art Brut vs. Satan』というとんでもないタイトルのArt BrutのサードアルバムはPixesFrank Blackがプロデュースとの事で、自分の中では密かに話題を呼んでいますのでご紹介。
正直なところ今作『Art Brut vs. Satan』でもサウンドの基本的路線は前作までと変わらず、ザクザクしたギターと性急なサウンドが特徴で、そこに扇動的なボーカルが乗ってくるというスタイルを貫き通しております。そこで歌われるArt Brutの歌詞はかなり特異なもので、言葉を畳み掛ける様に詰め込んで一気に捲くし立てる事で圧倒的な存在感を出しています。
実はたまたま旅行したロンドンでArt Brutのライブを見た事があって、その時はまだデビューして間もない時だったのですが、ボーカルEddie Argosの外見はBryan Ferry風ながらどこか貫禄があって、ボーカルスタイルもまるでアジ演説の様だった為、その特徴的なボーカルの存在感が強く印象に残りました(ちなみに対バンは¡Forward, Russia!だったので、全体的にエキセントリックなラインナップ)。そういう縁もあって聞き続けているArt Brutなのですが、聞いていくうちにArt Brutがイギリスのバンドでありながらアメリカでも評価されている理由が見えてきました。Frank Blackにプロデュースを頼んでいる時点で他のUKバンドとは一線を画しているのですが、今作『Art Brut vs. Satan』でも自分のフェイバリットバンドであるReplacementsを歌ったそのまんまの「The Replacements」という曲があったりと、相変わらず歌詞の面でも特異な才能を発揮しており、今作でもアメリカでは評価されるのではないかと思います。ちなみに「The Replacements」という曲は当然の如くReplacementsサウンドを意識したものになっており、よくよく聞いてみればEddie Argosのボーカルスタイル自体がPaul Westerbergの影響下にある事が『Art Brut vs. Satan 』ではハッキリと浮き出てきています。
今作『Art Brut vs. Satan』Frank Blackの手に掛かっても基本的なサウンドの構造の変化は無く、むしろまとまりのある正しいガレージロックアルバムに仕上がったのは、元々Art Brutを気に入っていたFrank Blackがバンドの特質を理解していたからで、それ故の好プロデュースだと思いますし、今後もArt Brutサウンドがドラスティックに変化するとは考え難いので、現状のまま多くの物語を詰め込んでいって欲しいと思っています。

Art Brut Vs Satan

Art Brut Vs Satan

埋め込み出来なかったのでレコーディング風景でも。Black Francis(Frank Black)もいるよ。