The Veilsが『Sun Gangs』で見せた真逆の血筋

Finn Andrews率いるThe Veilsの3枚目となるアルバム『Sun Gangs』が深化した内容だったのでご紹介。

VeilsといえばFinn Andrewsの素晴らしい歌声にスポットが当たる事が多いバンドですが、確かに今作『Sun Gangs』でもそのエモーショナルな歌声は健在で、系統でいえばJeff BuckleyMuseMatthew Bellamyあたりのボーカルスタイルと印象が重なります。『Sun Gangs』では今まで以上にハードでエモーショナルなボーカルが耳に残り、収録の楽曲自体も叙情的な楽曲よりハードな楽曲が印象的ではありますから、その意味ではエモーショナルなボーカルを活かしきった作品に仕上がっているといえます。プロデュースはGraham SuttonBark Psychosis)でJarvis Cocker、British Sea Power、Delaysなどのプロデュースで有名な人なので今作にはマッチした人選だと思います。ただし、一曲(アルバムの冒頭を飾る「Sit Down By The FIre」)だけはBernard Butlerのプロデュースになっており、今作の中で少し浮いているというか毛色の違う仕上がりになっています。Bernard Butlerがプロデュースの一曲は、どちらかというと従来のVeilsの楽曲の印象に近いポップさを残した叙情的な一曲で楽曲自体の出来も非常に良い為、正直、Bernard Butlerのプロデュースでアルバムを聞いてみたくなったのは確かです。
とはいったものの全体を通せば『Sun Gangs』は暗く沈みこみ敬虔さすら感じるストーリー性を持った作品で、非常に評論家受けしそうな内容ではあるので、三枚目のアルバムで若干印象が薄れていたVeils(日本では特に)の起死回生的な作品になるのではないでしょうか。それにしてもXTCBarry Andrewsの息子であるFinn Andrewsですが、XTCサウンドとはある意味対極的なサウンドに深化していっているのは大変興味深いです。

Sun Gangs

Sun Gangs

The Veils - "The Letter"