Bishop Allenの新作『Grrr...』は過ぎてしまった傑作

Bishop Allenの新作『Grrr...』が良作だったのに、聞いてて少々複雑な気持ちになったのでご紹介。

個人的に2007年度のベストアルバムに挙げた前作『The Broken String』が傑作だった為、今作にも相当な期待があったわけですが、正直なところ、期待が大きかった分だけ少々肩透かしな一枚となっています。前作『The Broken String』が2006年に毎月EP(4曲入りのシングルEP盤《しかもカバー曲無しの全曲オリジナルでデモ音源の類は含まれない》を11枚とその楽曲を中心としたEPという名の14曲入りのライブ盤)を発表し、その中の9曲を新録し新曲を加えたという精選された特異なアルバムだった為、その『The Broken String』と比べてしまうと今回の『Grrr..』は非常にオーソドックスな一枚という印象になってしまいます。
いや、もちろんこのアルバムの完成度が低いかといえば全然そんな事は無くて、非常に完成度が高い高性能のポップアルバムなのですが、逆に言えば隙が無くて遊びが少ないアルバムともいえるわけです。Bishop Allenサウンド自体は元々地味ではあったのに、『The Broken String』ではそれを逆手に取ったようにサウンドを突き詰めていって精度を上げていった結果、素晴らしいアルバムになったわけで、今作『Grrr...』は実にフラット過ぎて期待以上の驚きの部分は無い為に、その辺が少々不満ではあります。Bishop Allenの音楽は聞く人によっては非常にシンプルでラフでインディ色が強いというイメージを持たれるかも知れないのですが、実は物凄く計算高いというか、想像以上にかっちりと作られているサウンドだと思っていて、これはBishop Allenの中心人物(というか基本的には二人のユニット)であるJustin RiceChristian Rudderハーバード大出身だから、まあインテリですよね)の計算されたバランス感覚の元で成り立っていると思っています。今作でもその精度の高さとバランス感覚の素晴らしさは存分に発揮されており、非常に聞いていて気持ちが悪い部分の無い絶妙のアルバムになっていると思います。
とまあ何となく褒めきれていない感じの文章になりましたが、こっちが気合を入れ過ぎて透かされただけで、コンパクト(今作も13曲で35分42秒)にバランス良くポップミュージックを奏でる能力で言えばBishop Allenの右に出るものはそうは居ませんから、総合力でいえば今作『Grrr...』も文句の付けられない素晴らしいポップアルバムだといえるでしょう。

GRRR...

GRRR...

ちなみに随所でアクセントとなるボーカルを聞かせてくれているのはDarbie Nowatkaで、正式メンバーでは無いようですが前作にも参加していましたし、そのルックスも含めて、Bishop Allenの楽曲の中でも重要なパーツになっています。

"Dimmer" by Bishop Allen