果たしてThe Firemanの『Electric Arguments』はPaul McCartneyのソロアルバムなのか?

The Firemanの三作目『Electric Arguments』は名義こそFiremanですが、限りなくPaul McCartneyの新作といっても差し支えの無い作品になっていますのでご紹介。

The FiremanといえばPaul McCartneyとプロデューサーYouthKilling Jokeのベーシストでもある)からなるユニットで、これまでの作品はアンビエントで実験的な作風だった為に、ファンからは微妙なポジションで捉えられていたのですが、今作『Electric Arguments』は全曲Paul McCartneyの作詞・作曲でボーカルが入っている為、概ね好意的に受け入れられています。特にメロディメーカーとしてのPaul McCartneyの魅力が滲み出た「Sing The Changes」やスペクターサウンドともいえる「Dance ’Til We’re High」は評判が良く、確かにPaul McCartneyのソロアルバムの曲として収録されても違和感は無いと感じました(自分は7曲目の「Sun is Shining」BeatlesというかGeorge Harrison風味で好き)。また、Paul McCartneyが激しくシャウトする「Nothing Too Much Just out of Sight」の様なハードな曲もあって、ブルースロック的なアプローチも目立ちます。一方で前作までのアンビエントやエレクトリックなサウンドが影を潜めているかといえばそうではなく、8曲目まではロック色の強いポップな楽曲が並ぶのですが、終盤の9〜13曲目では従来のFiremanのコンセプトである実験的な部分が目立っていますので Firemanの今までの流れを全く踏襲していないというわけではありません。また、Paul McCartneyのソロアルバムである『McCartney』『McCartney Ⅱ』の音の感覚にも通ずる部分があるようにも感じ、ソロアルバムに近いながらもソロアルバムでは生まれ得ないサウンドを披露してくれています。兎に角『Electric Arguments』Paul McCartneyの課外活動として考えれば非常に良いアルバムだといえますし、近年のソロアルバムと比べても遜色の無い作品をあっという間に作り上げてしまったPaul McCartneyの好調期が続いている事は間違いないでしょう(やっぱり離婚が良い影響を与えているんだろうなー)。
世間一般的にはポップスターとしてのイメージが強いPaul McCartneyですが、個人的には意欲的に新しいジャンルに取り組んだり、実験的なサウンドに取り組み続けているPaul McCartneyの探究心ももっと評価されるべきだと思っています(パブリックイメージに逆らうように様々な音楽活動を平行して敢行し、いつまでも意欲的なPaul McCartneyのほうが、なんちゃってアバンギャルドな人達よりよっぽど先進的で実験的だぜ)。

Electric Arguments (Dig)

Electric Arguments (Dig)

ちょっとチカチカしますが相変わらずお元気なようで、Paulの存在感のせいで何だかほっこりするのはご愛嬌。
The Fireman - Sing The Changes