The Pink Spidersの『Sweat It Out』は売れてくれないと困る崖の上の一枚

The Pink Spidersが新作『Sweat It Out』でビルドアップしたロックンロールを聞かせてくれていたのでご紹介と支援。

何と今作『Sweat It Out』のプロデューサーはBrendan O'Brien*1で、前作の『Teenage Graffiti』Ric Ocasekのプロデュースにも驚いたけど、大物プロデューサーが仕事をしたくなる要素をPink Spidersが持っているという事なんでしょう。前作に比べてかなりハードな音が耳に入ってくる『Sweat It Out』は、Brendan O'Brienの趣向もあるのでしょうが、賛否が分かれるところかもしれません。『Teenage Graffiti』で見られた必殺のメロディが若干パワーダウンしているのは確かで、それと引き換えにバンドとしての強度を手に入れようと試みたといったところでしょう。ただし、彼らの80年代のハードロック的なギターリフなどのアプローチは前作でも垣間見られた一面なので、その面を推し進めたという点では決して不自然なシフトチェンジでは無いように思います。ところどころでアクセントになっているキーボード(Brendan O'Brienがキーボードを担当している)が彼らの持ち味である軽快さを失わせていないし、Sheryl Crow「Run, Baby, Run」にそっくりな「Don't Wait For Me」を境に7曲目のStranglehold、そして今作のベストトラックである8曲目の「Settling For You」以降は従来のPink Spidersの魅力も全開(12曲目「Here Comes Trouble」も好きだな〜)なので、アルバムを通すと若干饒舌になってはいるものの良作だと思います。
傑作メジャーデビューアルバム『Teenage Graffiti』の発売の後、Pink Spidersは順調に活動を続けニューアルバム『Sweat It Out』も2007年の暮から2008初頭には発売になるといわれていたのですが、Pink Spidersに思いも寄らぬ困難が降りかかってしまいます。何とツアーの為に買ったバスが3月に全焼し、全ての物を(現金や衣装はもちろん、カメラやノート型パソコン、歌詞の全てなどなど)失ってしまうという最悪の出来事が起きてしまいます。その影響もあってか5月には中心人物のMatt Friction以外のメンバーは脱退してしまっています(アルバム『Sweat It Out』は完成していた為、今作のクレジットは前メンバーのまま)。Matt Frictionは新しいメンバーと共にPink Spidersを続けていくつもりでツアーを回っているものの、厳密には困難を乗り越えて『Sweat It Out』が生み出されたわけではないので、まだまだ不確定な事も多く、様々な面でPink Spidersの今後の活動が心配ではあります(だから皆さん買ってあげてね)。

Sweat It Out

Sweat It Out

お安くなっているので前作も併せてどうぞ。
Teenage Graffiti

Teenage Graffiti

The Pink Spiders - "Gimme Chemicals"

*1:Bruce Springsteenのアルバムのプロデューサーで有名(もちろん来年初頭に発売される新作『Working on a Dream』のプロデュースも彼だ)。最近の仕事ではAC/DCの復活アルバム『Black Ice』Pearl Jamの新作でのプロデュース。