The Verveの再結成盤である『Forth』のクソ凄まじき生命力

The Verveの再結成盤である『Forth』はUKでは当たり前のようにチャートで1位を獲得し、本国では概ね歓迎ムードでこのカムバック作は受け入れられている。
では実際に内容はどうなんだという話なんですが、ひとことで言えば物凄くバイタリティに満ち溢れた作品。前情報ではポップさの欠片も無いようなサイケデリックアルバムという事だったのですが全くそんな事は無く、良い意味で大きく期待を裏切ってくれました。確かに一曲一曲が長いし、アルバムを通して聴くとかなりグッタリとするアルバムではあるのですが、Richard Ashcroftのソロでの活動を継承したポップ路線も垣間見えるし、かといって『Urban Hymns』ほどに際立つポップさ(といっても前作でも曲は長かったのですが)ではなく、前作では思いっきり主張していたRichard Ashcroftのメロディを初期のVerveに程よく溶け込ませているなといった印象。このアルバムでキラーチューンが無くなったとかメロディが書けていないというのは本質ではなく、あくまでも忍ばせているだけのメロディが逆に一筋の光のように感じるし、上手くバンドとのバランスを取れている点を評価すべきではないかと思う。
フロントマンであるRichard Ashcroftに注目が集まりがちなのは仕方ないせよ、間違いなく今作はRichard Ashcroftの帰還作ではない(そもそもソロでも十分なキャリアを積んでいるし)。4人のジャムセッションから生まれただけに、そのサウンドは生々しくも混沌としており、Richard Ashcroftのソロ作品と同じように彼が愛を叫んでもその声が深く沈みこんだ哀愁を帯びて聞こえるのが面白い。その辺からみても今作はVerveの復活というより、Nick McCabeの帰還といった意味合いを強く感じる(といっても今作はリズム隊の二人の活躍も目立つんですけどね)。
まあ前作からVerveを聞き始めた人には不評かもしれませんが、初期からRichard Ashcroftのソロ活動までを追いかけているリスナーなら満足の出来といったところではないでしょうか。何より深部に落ちていくようなどす黒いサイケデリックをこれ程ポップに鳴らせるバンドはVerve以外には現存しておらず、唯一無比の存在だという事には変わりは無いでしょうし、再結成盤としては文句のつけようのない出来でカムバックを果した事に間違いは無いと思います。

装丁とボーナストラック(このお陰で長いアルバムが更に長くなっているけど)の出来も良かったので買うなら国内盤を(DVDも付いている)。

FORTH(初回限定盤)(DVD付)

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それにしても前作から11年も経っているのが信じられない。
Richard Ashcroftのソロ活動があって不在を感じなかった事を差し引いても、この存在感と生命力は尋常じゃない。逆に言えばそれだけシーンが静か過ぎたのかもしれないし、Verveだけがクソ凄まじく変わらなかったのかもしれないと思うのでありました。