Ben Leeの『Deeper Into Dream』で夢心地に浸る

Ben Lee『Deeper Into Dream』を繰り返し聞いています。2009年の『The Rebirth of Venus』も素晴らしかったBen Leeの8枚目のスタジオアルバム『Deeper Into Dream』がやっぱり素晴らしかったのでご紹介です。
Ben Leeのホームスタジオで作成された『Deeper Into Dream』は、前作に引き続き、2009年に『it was never about the audience』を発表したNoise Addictでも活動を共にしているLara MeyerratkenNic Johns等が参加しており、非常にパーソナルで手作り感の強い作品になっています。聞いた印象としては、前作までの完成度の高いポップソング集というよりも、前述した『it was never about the audience』に様なローファイさも取り入れられたサウンドの感触です(『it was never about the audience』HPよりフリーダウンロードできますので良かったらどうぞ)。そのタイトル通り夢をテーマとした今作はコンセプトアルバムの色合いが強く、サウンドの方も宅録的な暖かみを持ちながらも安っぽくならず、キラキラとした浮遊感のあるサウンドに仕上がっており、絶妙のバランスを発揮する事で近年のソロ作品とは一線を画した新境地といえる仕上がりになっています。とはいっても近年のBen Leeがアプローチしてきた普遍的なポップソングは健在で「Indian Myna」「When The Light Goes Out」などの楽曲で聞かせる突出して弾ける様なメロディの力は今作でもしっかりと発揮されていますし、「Pointless Beauty」に様な楽曲を筆頭にジンワリと染みるミドルチューンの仕上がりも上々です。特にアルバムの最後を飾る「Get Used To It」は素晴らしいポップソングで、夢から覚めた様にSE的な「Dirty/My Third Dream」へと繋がる部分にハッとさせられる様な美しさがあります。この様に極上のポップソングが統一感を持って『Deeper Into Dream』の世界観に溶け込む事で、アルバムはコンセプトアルバムでありながら、ポップアルバムとしても機能させる事に成功していると思います。これは『The Rebirth of Venus』から『it was never about the audience』を経て、両作の魅力をバランス良く取り込んだ結果ともいえると思います。
元々ローファイでオルタネイティブなロックサウンドで若くしてデビューを果たし、時代の寵児的な扱いだったBen Leeが確固たるシンガーソングライターとしての作品群を生み出し続けた先に辿り着いたのがこの『Deeper Into Dream』で、その作品がDIY精神が存分に発揮されたマスターピースの様な作品に仕上がった事は素晴らしいと思うし、優しさや温かさの中に確固たる意思が宿る『Deeper Into Dream』は2011年を代表する傑作と言っても過言では無いと思います。

Deeper Into Dreams

Deeper Into Dreams


蛇足ですがBen Leeについて、日本ではもしかすると過去の人として認識している人が多いかもしれません。でも実際はレビュー内でも書いてきたとおり、ソロキャリアをシッカリと歩んできたアーティストだし、Noise Addictとしての活動も再開させています。昨年はグラミーにノミネートされたMargaret Choのアルバムに参加していたりと、非常に充実した音楽活動を行っています(プライベートでは2008年にIone Skyeとの結婚もありましたしね)。ですので、もう少し日本でも様々なメディアが取り上げてくれればなと思っております。
蛇足2、今作はDangerbird Recordsからの発売で、この辺の情報も少し。Dangerbird RecordsBeady Eyeアメリカやカナダでの流通を手がけたり、他にもButch Walker、Codeine Velvet Club、Darker My Love、The Dears、Delphic、Division Day、Eric Avery、Eulogies、The Fling、Fitz and The Tantrums、Hot Hot Heat、The Limousines、Maritime、Minus the Bear、The One AM Radio、Sea Wolf、Silversun Pickupsなどと面白いアーティストを取り揃えています。今後も注目のレーベル。