We Love Bluetones

ということで、The Bluetonesのライブを楽しんできました。
会場は仕切りで狭めていましたが、解散ツアーだという事も手伝って決して寂しい客入りではありませんでした。ライブはほとんど時間通りに開演。ライブの各曲についてはセットリストを参照して頂きたいのですが、新旧の楽曲を織り交ぜた内容にはなっているものの、ベスト盤のような内容ではなく、今のBluetonesのベストのバランスの良いライブセットといった印象を受けました。Bluetonesといえばどちらかといえば優しくてポップな印象を持っている人が多いと思うのですが、ライブバンドとしてはむしろ骨太なバンドで、必要最低限のバンド構成ながらタイトなリズム隊と、演奏のバランスの良さは特筆すべき点で、その演奏にMark Morrissの奇跡的に優しい歌声が乗ってくる訳で、ライブとして悪いものになるわけがなかろう。Mark Morrissの声に関して書かせてもらえば、デビュー当時から変わらないエヴァーグリーンで優しい歌声は、劣化するどころか力強さと深みが加わる事で、円熟味がありながらも従来の魅力を失っていないという奇跡的な歌声で、しかもライブで聞いてもピッチは外れないですし、そんなボーカルがいるバンドのライブが悪いものになるわけがなかろう。あとボーカルといえばコーラスを担当するScott Morrissのボーカルにも安定感があって、兄弟だけに息が合っているのはもちろんなのですが、知らず知らずに染みこんでいたBluetonesの歌を構成する大きな要素になっていた事を、ライブを見て改めて感じました。
ライブを通じて一番感じたのは、比較的新しい楽曲がいわゆるBluetonesクラシックであるヒット曲に勝るとも劣らない魅力を放っていた事で、「Carry Me Home 」で盛り上がる会場の反応を見ながら嬉しく思いました。音源を時系列で聞いた人なら分かると思うのですが、Bluetonesのアルバムは枚数を重ねるごとに濃密になり、最後まで才能の枯れや衰えを感じることなく、クオリティの高い作品であり続けました。パブリックなイメージがブリットポップ期のバンドだとしても、最後まで現役感を失われることは無かったわけで、それはBluetonesが残した音源が証明していると思います。だからライブは新旧の楽曲を織り交ぜていても、懐古主義に偏るものではなく、新しい楽曲に観客がついていけないものでもなかった事が、ラストライブといえど単純に現時点でのベストなセットリストになった大きな理由だと思います。ベストなセットリストの中で個人的に印象的な場面を挙げるとしたら前述の「Carry Me Home」、大好きな「Autophilia」から「Cut Some Rug」の流れが堪りませんでした。「Autophilia」って改めて聞いても非常に面白い楽曲で、優しくて牧歌的な歌詞とメロディにギターサウンドが重なり合って畳みかけてくる独創的な構成なだけに、ライブで表現するのが難しい楽曲だと思うのですが、見事に再現していました。続く「Cut Some Rug」はとにかくメロディラインが好きで「You say I can talk to you anytime Though I just wanna cut some rug」の部分の歌詞の乗せ方が最高。そんな2曲を立て続けて演奏されて悪いはずがなかろう。
えーとそろそろまとめます。
Bluetonesはあくまでもギターバンドの枠の中に収まりながら、創意工夫によって可能性というか密度を高め続けたバンドだと思うし、革新的なサウンドがなくても楽曲のクオリティとメロディを突き詰め続けてきた事がそのまま音源やライブにも現れていて、思えばデビューアルバム『Expecting to Fly』が周囲の想像以上にスケール感があり、繊細なギターサウンドを中心とした実に地に足がついた作品で、ともすれば地味と批判されても不思議ではない作品に仕上がった時からバンドとしての完成形というか思い描いていたバンド像とストーリーを描き切る事は決まっていたかの様で、そのストーリーは『Return to the Last Chance Saloon』で聞かせた骨太でグルーヴに重きを置いた楽曲、『Science & Nature』で聞かせた浮遊感があって牧歌的で優しげな楽曲、『Luxembourg』で聞かせたハードでガレージ色の強い楽曲、『The Bluetones』で聞かせたメロディ、ギター、アイデアの総決算、そして『A New Athens』で聞かせた最後の挑戦と飛翔を経て見事に結実したのではないかと思います。最後のその瞬間まで実に見事で完璧なギターバンドでした。
という事でライブの感想は以上。これで終わりではなくてもうちょっとだけ続きます。セットリストは以下の通り。親切な人が写真を撮らせてくれたので掲載しておきます。

この後に大阪では、アンコールとして「I Was A Teenage Jesus」をやってから 大合唱が鳴り止まなかった「If...」。そして「Emily's Pine」から「A Parting Gesture」で終了でした。「I Was A Teenage Jesus」「Emily's Pine」は結構レアな選曲だと思うのですが、セットの中に組み込まれても全く違和感なかったですし、この辺はBluetonesBluetonesたる所以で実にBluetonesらしいアンコールでした。そして本当にBluetonesらしい幕の引き方でした。
蛇足ですが、ライブ後、club WONDERにてアフターパーティだったのですが、メンバーが来るかもとの事で参加。ライブ終了が20時くらいだったので、疲れと酔いで途中で心折れそうになる中、0時ぐらいにメンバー登場。ちゃっかり写真とサインは頂きました。Markが右手にタバコを持っていたので左手で握手をしようとしたら、わざわざタバコを持ち替えて、左手はアンラッキーだから右手でするんだよって。二人で何度も何度も右手で握手を交わしました。やっぱり音楽通りの優しいナイスガイ。ライブ中も丁寧に楽曲を説明して演奏していたMarkの印象そのままでした。Bluetonesのメンバーのこれからの音楽活動を心より応援します。