Hot Hot Heatが『Happiness Ltd』の舌足らずな開き直り

Hot Hot Heatといえばセカンドアルバム『Elevator』に収録された名曲「Goodnight, Goodnight」の印象が強く、前作『Happiness Ltd』があまり印象に残らなかった事もあって、忘れかけた存在になっていたのですが無事に新しいアルバム『Future Breeds』が届けられました。前作『Happiness Ltd』は、あまりにも真っ当に作り過ぎた事で強力な特徴が感じられず、逆に引っかかりの少ないアルバムになってしまっていたのですが、今作『Future Breeds』では完全に振り切れたサウンドで、賛否両論は出てくるでしょうが印象に残るサウンドを聞かせてくれています。
『Future Breeds』Hot Hot Heatが元来持っていた80年代のニューウェイヴ色を濃く煮詰めた様なサウンドで、ここまで徹底されると逆に天晴れな印象すら受けます。変態的なリズムがファンキーで、Steve Baysの舌足らずなボーカルはJulian Casablancasにも通じる声質(ボーカルの処理の仕方が似ているというのもあって)でディスコパンクなThe Strokesといった印象を残し、個々の楽曲のメロディが及第点に達しなくても、とにかくリズムに焦点を当てて、アルバム全体で勝負するんだという気概を感じる一枚に仕上がっていると思います。
正直なところ、自分が最近聞いてこなかったジャンルのサウンドの為、懐かしさとともに新鮮さを感じてしまったという感も強く、決して目新しいサウンドでもないアルバムではあるのですが、完全に開き直った事でHot Hot Heatの今後の活動にはプラスに働くと思います。ちなみに、Hot Hot Heatがこの様な開き直りを果した背景には、ディスコパンク色の強いFake Shark – Real Zombie!のベースシストでもあるParker Bossleyをメンバーとして迎え入れたという事も影響しているのだと思うのですが、既に現時点では脱退している様で、今後にどの様にバンドが進んでいくのかは分かりませんが、進むべき方向性が定まればその魅力が更に発揮されるのではないかと思います。
簡素なパッケージングが増える中、デジパック仕様にポスターの裏に手書きのライナーが凝った作りで好感度高し。

Future Breeds

Future Breeds

ストーリー仕立てで楽しげなPV。