Adam Greenの『Minor Love』でセレブを吹き飛ばす

Adam Greenの最新アルバム『Minor Love』が発売されているのでご紹介。
6枚目のソロアルバムという事で、元The Moldy Peachesの肩書きは必要なくなりつつあるAdam Green。新作も相変わらず肩の力の抜けた良作で、安心の仕上がりです。前作『Sixes and Sevens』はゴスペルの要素が取り入れられたソウルフルなアルバムで、Adam Greenの作品の中で最も華やかさがあり、完成度も高かったのですが(とはいってもAdam Green特有のユルさは健在だったけど)、今作は『Minor Love』はその流れに逆らう様にローファイでラフな印象を受けます。プロデュースは友人でもあるNoah Georgesonが務め、Adam Greenが自身で様々な楽器を演奏している事からも分かる通り、『Minor Love』Adam Greenが実にリラックス出来る環境で製作された(セレブなプールハウスで作られたとか何とか)為、抒情詩的な意味合いが強まった作品だと思います。とはいっても過度にメランコリックな作品ではなく、Adam Greenの持つポップセンスは今作『Minor Love』でも発揮されており、「What Makes Him Act So Bad」では相変わらずの親しみやすいメロディを炸裂させていますし、ハードでローファイながらどこかジェントルでポップな「Oh Shucks」の様な楽曲もあって、全体のトーンは統一感があるものの、『Minor Love』は様々な表情を見せてくれています。
日本では認知度の低いAdam Greenですが、本国アメリカでは何故かセレブなロックアーティストの様な取り上げられ方をされています。その端正な顔立ちと強烈な個性故にイメージのみが先行気味なのが複雑なところで、個人的にはAdam Greenの本質は『Minor Love』とアルバムに名付けた事からも分かる通り、どちらかと言えば陰のある内面とポップスの絶妙なバランスにあり、その黄金比で輝いているアーティストだと思っています。渋すぎる歌声が親しみやすいメロディに乗っている事のコントラストも絶妙だし、『Minor Love』の様にローファイなサウンド(今作ではある程度計算されたものではあるのですが)の中でその歌声がより一層に輝きを放っています。
全14曲ながら2分前後の楽曲が中心でコンパクトにまとめられている為に『Minor Love』はあっという間に聞き終えてしまうのですが、Adam Greenの作る音楽が多くの人に届き、もっと本質が伝わる事を願わずにはいられない作品ですので、ぜひ聞いて頂きたいものです。

Minor Love (Dig)

Minor Love (Dig)