Wheatusの『Pop, Songs & Death: Vol. 1 The Lightning EP』を満喫する

という事でここのところWheatus『Pop, Songs & Death: Vol. 1 The Lightning EP』ばかり聞いているわけです。
もう一度おさらいしていきますが、この『Pop, Songs & Death: Vol. 1 The Lightning EP』Wheatusのオフィシャルサイトでダウンロード可能(フォーマットはmp3の他にもFLACDSD(ダイレクトストリームデジタル)が加わる予定)。金額は自由に決められるので実質フリーダウンロードですが、寄付という形でお金を支払う事が出来ます。5$以上の寄付でボーナストラックである「Lemonade」、「Hometown」のライブバージョンがダウンロード出来、PDFで「Real Girl」 のコミックブックも付いて来ます。25$以上の寄付でCD(「From Listening to Lightning」「Real Girl」のアコースティックライブがボーナストラック)にDVDやコミックブックなどボーナスマテリアルが付いて来るリミテッドエディション(500部限定)が送ってきます(送料も価格に含まれる)。自分はリミテッドエディションを注文していますが、当然まだ到着はしていないので、ダウンロードした音源でレビューを書いていきたいと思います。
ダウンロードできる音源は320kbpsですのでmp3といえど高音質。それに加えて最新のマルチトラックレコーダーSonomaシステムを使ったDSD方式の録音の様で、物凄い情報量の音楽を楽しむ事が出来る様になっています。まず、音がダイレクトに伝わってくるのが明らかで、様々な音の要素が洪水の様に次々と迫ってきます。音自体は物凄くクリアなのにライブ感のあるサウンドを生み出しているのがこのEPの大きな特徴で、このサウンドを完全な自主製作で作り上げているWheatusにまずは拍手を。個々の楽曲で言えば、決して華のあるメロディではなくじっくりと腰をすえたメロディとサウンドで、一曲目の「From Listening to Lightning」は11分を超える大作。非常に長い楽曲でギターと鍵盤のソロが延々と続く楽曲なのに、聞き終えた後に重さが残らないどころか爽快なのはサウンドプロダクションの賜物で、まるでライブ会場でライブ用にアレンジされた楽曲を聞いているかのような印象。二曲目の「You and Your Stoopid Guitar」はこのEPで一番ポップなサウンドWheatusが得意とするキラキラとした80年代のフレーバーとハードロックの要素を散りばめたサウンドを聞かせる清涼剤の様な楽曲で、このEPを通して特徴的なドラミングとキーボードが最も輝きを放っている楽曲(まるで健康的なDoorsだ)。三曲目の「Real Girl」は昨年から発表されており聞く事が出来た楽曲で、第一印象ではシンプルで地味な印象を受けたのですが、このEPの中で聞くとドッシリとした存在感が圧倒的に増し、コミックブックが作られている事からも分かる通り作品の核となる楽曲。4曲目の「Now」アコースティックギターから始まるシンプルなバラード調の曲ですが、Brendan B. Brownの高音のボーカルがシンプルで奥行きのあるサウンドと重なり合う事で際立つ一曲。「If You Need A Friend」はメロディこそ明るめのミドルテンポの曲ですが、6分52秒の長尺の曲で強力なサビに向かって徐々に高揚していくサウンドが特徴で、サビのコーラスワークが非常に印象に残ります。最終曲の「Texas」はこのEPを象徴するかの様に静かに始まり、徐々に音が増殖しながら広がっていく様なサウンドですが、音の洪水に飲み込まれた7分44秒の果てに希望が広がっている様にも聞こえます。
という事で全6曲で39分という特殊なEPで、個人的にはアルバムと変わらないボリュームを楽しむ事が出来ました。Wheatusはその作品の発表方法からも分かる通り、新しい取り組みを誠実に行っているバンドで、完全な自主制作ながらも技術的にも最先端のサウンドを届けてくれています。非常にデジタルな作品ながら、そのサウンドはどこか暖かみがあるライブサウンドで、『Pop, Songs & Death: Vol. 1 The Lightning EP』のジャケットからも分かる通り、やはり非常に暗い印象とテーマを持った作品である事には変わりが無いのですが、そのタイトル通り陰陽が表裏一体になっている作品で、暗いテーマにも関わらず、それほど重たい印象を受けないのはBrendan B. Brownの飛びぬけたソングライティング能力と素晴らしいサウンドプロダクションによるところが大きく、Wheatusの持つキラキラとしたサウンドが失われていないのが嬉しい。
恐らくこの作品は壮大なコンセプトアルバムで、今回のEPは序章に過ぎないと思っていて、冬に発売される『Pop, Songs & Death: Vol. 2』では新たな展開を見せる事が予想されます。Wheatusの描く現代のポップミュージックの向こう側が楽しみで仕方ないけど、まずはこのEPを存分に楽しみたいと思います。
[:W300]

ダウンロードはこちらから↓
http://www.wheatus.com/

何度と無く見たはずのこのPVも『Lightning EP』を聞いてコミックブックを見たあとだと景色が変わる。
Wheatus 「Real Girl」