Beirutの『March of the Zapotec / Holland』の管楽器とエレクトロのボリューム感

先日ご紹介した『Dark Was The Night』にも参加していたBeirutの新作EP『March of the Zapotec / Holland』がボリュームたっぷりで発売されていたのでご紹介。
BeirutZach Condonのソロユニットで一昨年発売された『The Flying Club Cup』も各方面で高評価を受けており、その音楽と旅を楽しみ続ける世界観にも注目が集まっています。今回の『March of the Zapotec / Holland』はEPながら二枚組のボリュームで、完全にコンセプトを分けて収録された二枚から成っています。一枚目の『March of the Zapotec』はMexicoを旅してレコーディングされただけあって、今までは東欧のトラッドミュージックのイメージが強かったBeirutですが、今回はその流れを継承しつつも少々趣が違います。ジャケットからも分かる通り、ユーフォニアム(euphonium) などの管楽器が大きくフューチャーされており、歌やメロディ以上にその音色を全編に渡り楽しむことが出来ます。またもう一枚の『Holland』の方はエレクトロに接近したBeirut流のエレクトロポップで、こちらでは打ち込みを多用したBeirutの完全なる新境地を聞かせてくれています。この様に毛色の違う楽曲を収録しているが故に二枚組という形でEPが発表されたのだと思うのですが、各ディスクで完全に棲み分けが出来てると思うので、Zach Condonの新たな試みは成功しているといえると思います。今回の『March of the Zapotec / Holland』Beirutをボーカル面で楽しむには少々物足りないかもしれませんが、ワールドミュージックからエレクトロまで幅広いリスナーの入門盤に成り得ますし、幾らでも可能性を秘めたBeirutの世界観を存分に楽しむ事が出来る好盤だといえると思います。
トラッドミュージックとの結びつきが強いフォーク畑のアーティストだけでなく、ロックの遺伝子を持ったアーティストがトラッドを強く打ち出してきている事が目立つ昨今のシーンですが、これからはBeirutの様に時代をすっ飛ばしてトラッドと電子音楽の両方からアプローチをかけてくるアーティストも増えてくるのだと思います。そんな事を思いながら、久しぶりに旅に出たくなる様な一枚。

MARCH OF THE ZAPOTEC

MARCH OF THE ZAPOTEC

貴方もメキシコを旅する気持ちになれる。Beirut - La Llorona

こちらはエレクトロ風味。Beirut - My Wife, Lost In The Wild