Paul Steelの『Moon Rock』は日本から火が付く教科書的な一枚

発売直前でレーベルに契約を解除された為にお蔵入りになっていたPaul Steel『Moon Rock』が無事に発売されたのでご紹介。

先行シングルである「Your Loss」のセールスが思うほど伸びなかったからだとか、どうやらアルバムの内容にOKが出なかったからだなど、色々な原因から発売直前で発売を見送られたと言われているPaul Steel『Moon Rock』ですが、そんなネガティブな前情報を吹き飛ばす22歳新人らしからぬ完成度を持ったアルバムになっています。一曲目の「In A Coma」を聞いた瞬間にBrian Wilsonチルドレンとわかるその音楽はドリーミーでカラフルでメロディアスでポップでキラキラとした・・・などなどお決まりの賛辞句が並ぶようなポップアルバムの教科書的な作品。個人的にはRoger Joseph Manning Jr.あたりが思い浮ぶ職人的なサウンドながら、多くの人から支持されるだけの大衆性を持ち合わせた作品だと思います。とはいえ、本国イギリスでヒットするかといわれたらMikaほどの強力なアクは無い為、現時点では難しいかなと感じました(事実、本国ではそれほど話題になっていない模様)。どちらかといえば日本人好みな音楽だと思うし、日本から火が付く可能性も高いと思うので、国内盤が発売された事は喜ばしい事でもあります。
Paul Steelは自主制作だったコンセプトアルバム『April & I』から比べると、かなりしっかりとしたプロダクションの『Moon Rock』を作り上げ、信じられない程の飛躍を遂げています。ただ、『April & I』は荒削りながらも底知れぬ可能性を秘めた作品だっただけに、『Moon Rock』は意地悪な見方をすれば、一本調子で器用貧乏になってしまう様な悪い予感をちょっぴり感じさせる作品ではあるので、今後のプラスアルファに大きく期待したいと思っています。

ナイスジャケット、脅威の絵本仕様の『April & I』

April & I

April & I

ボーナストラックの「Ray Gun」「Your Loss」のリミックスの出来も良いので国内盤を推奨致します。

ムーン・ロック

ムーン・ロック

夢に出てきそうな『April & I』に収録のPaul Steel - Honkin On My Crack Pipe